作家インタビュー第1回 仙田 学(作家)2

2、女装=助走する小説家

──小説家デビューしてからはどうでしたか。

文章が雑誌に載るとか、本が出版されるってとてもすごいことなんです。でもそうすると今度は、いつか読んでもらえなくなったらどうしようって不安がでてきました。出版のレールにただ乗るだけじゃなく、自分でも頑張らなきゃと読者に届くよういろいろやっています。女装の企画を立て、自分で『SPA!』に持ち込んだり[*1]。作品やエッセイを書くかたわら、4年間ぐらいCWSの添削講師もしていました。

──そういえば思い出しました。以前ゲスト講師としてCWSの講義に仙田さんが来られました。

創作本科の聴講コースの授業ですね。

──それが、パンクロッカーみたいな格好だった! 髪の色を青だか緑だったかにして。

たぶん茶色だったと思いますけど。

──あれは意図的だったんですか。

もともと関西人だから、笑いを取りたかっただけですよ。

──受講生はちょっと引いてましたが……。

昨年イベントで、ラノベ作家さんと対談[*2]したんです。そのとき女装して行ったら、50人ぐらい集まった会場の全員が、ドン引きでした!
後半に質問タイムもあったんですが、女装のことはいっさい誰にも触れられなかった。

──仙田学ってこういう人だと納得されてしまった?

ツルツルちゃん』[*3]が出たときに、早稲田文学編集主幹の市川真人さん[*4]から連絡があり、『早稲田文学』の表紙に出てみないか、撮影は篠山紀信さん[*5]です、と。
女装は16歳のときからの趣味だと市川さんに話したことがあって、覚えていてくれたんですね。そこで20年ぶりに女装しました。

──そうだったんですね。

それ以来、女装はパフォーマンスとして使えると思い、意図的にやっています。詳しいことは、『日刊SPA!』に連載した「女装小説家・仙田学の『女のコより僕のほうが可愛いもんっ!!』」[*1]を読んでください。

──ライトノベル作品『ツルツルちゃん』を書かれた経緯を教えていただけませんか。

スランプの時期が4年ほど続きました。書くことは書いていたんですが、一向に作品の形にまとまらず、さすがにちょっと疲れてしまい、純文学は向いていないかもしれないと。そこでラノベ作家になろうと一念発起。半年かけて研究しました。

──やっぱり研究から入るんですね。

そうですね。そのうちに、オークラ出版がラノベのレーベルを作るらしいと聞き、編集者を紹介してもらいました。そして刊行されたのが、『ツルツルちゃん』です。
続巻が文学金魚[*6]で公開されています。読んでみてください。

──読んでみます。ラノベと純文学の違いについてはどうお考えでしょうか。

僕は必ずしも純文学とラノベは違うものとは思っていません。違いといえば、ラノベは、最終的にはアニメ化されたり映画化されたりが着地点であり、小説がゴールではない。文章というより、どんな萌え要素があるか、どんな世界観なのか、どんなキャラがいるかということのほうが核になる。純文学の着地点は、文章そのものという気がします。物語やテーマも大切ですが、それがどこまで唯一無二の文章で書かれているかというところに作品の面白さがあるんじゃないでしょうか。

【校註】

  1. 「女装の企画を立て、自分で『SPA!』に……」とは、『日刊SPA!』に2017年4月から連載開始した「女装小説家・仙田学の『女のコより僕のほうが可愛いもんっ!!』」のこと。
    https://nikkan-spa.jp/spa_comment_people/%E4%BB%99%E7%94%B0%E5%AD%A6
  2. 「昨年イベントで、ラノベ作家さんと対談」とは、「総合文学ウェブ情報誌 文学金魚」主宰の2016年7月13日に行われた「第1回文学金魚大学校セミナー②」での、西紀貫之との対談を指す。
    http://gold-fish-press.com/archives/41065
    西紀貫之はサークルAGJスタジオ主宰、ライトノベル作家でライター。ライトノベル『苛憐魔姫たちの狂詩曲~棘姫ととげ抜き小僧~』(オークラ出版 NMG文庫)、『娼婦たちの騎士』(Kindle版)、『女子雪月花』(Kindle版)など著書多数。古流実戦剣術会の末席。
  3. 『ツルツルちゃん』は、2013年にオークラ出版 NMG文庫より発売された仙田学初のライトノベル作品。
  4. 市川 真人(いちかわ まこと、1971年8月10日―)は日本の文芸評論家。『早稲田文学』編集主幹、早稲田大学文学学術院准教授。著書に『芥川賞はなぜ村上春樹に与えられなかったか―擬態するニッポンの小説』。前田塁という批評プロジェクトの名義を用いることもある。前田塁名義で『小説の設計図』『紙の本が亡びるとき?』。 
  5. 篠山紀信(しのやまきしん、1940年12月3日―)写真家。ヌードから歌舞伎までそのジャンルの多様さは類を見ない。1973年、『女形・玉三郎』で芸術選奨新人賞受賞。1975年に雑誌『GORO』で山口百恵特集で使い始めた「激写」は流行語にもなった。『家』『晴れた日』『百恵』『Santa Fe(宮沢りえ)』『三島由紀夫の家』など作品集多数。
  6. 文学金魚(ぶんがくきんぎょ)は、ウェブ情報誌。
    http://gold-fish-press.com/

コメントは受け付けていません。


PAGE TOP